返品

夜が明けた10月25日。日曜日の午前8時。

妻は私のベットで、私はソファで、各、夜を明かした。

妻の体に触れた、シーツ、布団カバー、枕カバー、寝具の全てを洗濯機に放り込んだ。気持ちが悪い。体が受け付けない。

隣のコンビニで、サンドイッチと牛乳を買い、妻へ渡した。妻は手をつけようとしない。私は、封を開けて、少しでも食べるよう促したが、牛乳を一口、飲んだだけだ。

相変わらず、妻は口を開こうとしない。一体、何が目的で、ここまできたのか?自分の口から、真摯な謝罪、そして、自分は今後、こうしたいと、なぜ言えないのか。昨夜に続き、私は全く理解出来ずにいた。

しかし、一夜明けて、妻もさすがに、自らを客観視出来ているのではないか。考えが変わっているのではないか。僅かながら期待をしていた。

ここは、穏やかに優しく尋ねる。そうすれば、少しくらいは、口を開く事だろう。

ちゃん?

結局、ちゃんはどうしたいの?

このまま、口を開かず、何も気持ちを伝えなければ、粛と物事を進んでしまうんだよ?

本当に、それでいいの?

ちゃんは、本当に、これから、どうしたいの?

、、、わからない、、、

今は考えられない、、、

妻は、もう無理だ

無意識に平手を一度

この平手は

今までの20年間の結婚生活における

妻へ対する感謝の気持ちと諦めだった

不思議と暴力とは感じなかった

わかった。了解。じゃ、家を出て行ってくれ。真摯に謝罪しない。これからも夫婦を続ける意志も示さない。これ以上、一緒にいても意味がない。

これから二人で新幹線に乗って自宅へ一緒に移動する。

自宅に着いたら、荷物をまとめてくれ。荷物をまとめ終えたら、義母さんの家へ報告も兼ねて送る。

、、、こ、、今年、、今年いっぱい、、

子供達と暮らさせて下さい

、、、、お願いします、、、、。

それは無理だ。

もう、ちゃんに母親の資格はない。

あの家に、お前を住まわす事は出来ない。

もし、仮に、子供達が、お前と暮らしたいと望むなら、それは、止めない。その時は義母さんの家で子供達と暮らしてくれ。

妻は涙を流し始めた。目は床の一点を見続けている。焦点が合っていない。鼻水を垂らしながら、グシャグシャの顔でブツブツと呪文を唱えるように話し続けた。

、、、じゃ、、子供達の食事は誰が作るの、、、お洗濯は誰がするの、、、お弁当は誰が作るの、、、、

いや、いや、ちゃんの心配には及ばないよ。ちゃんがいなくても何とかなるから。と言うか、お前はもう、この家には必要ないから。家族をぶっ壊した張本人は、お前だろ?何を今更、言ってんの?

妻はオイオイ泣いている。哀れだ。見ていて猿芝居をしているようにしか感じない。不様だ。

ちゃん?

お前が全ての物事を選択して、この状況に至っているんだよ。

何が悲しいんだ?笑笑わせんなよ?

それと、、、今、この書類に判を押してくれ。

私はK同様、妻へ誓約書を渡した。

今、お前は、何も考えられないんだよな?

俺と夫婦を続けるのか、否かも決められないんだよな?

もし、今後、お前が、俺とやり直すと言う事を決めた時の為に、この誓約書を反省文として保管させてもらう。そして、その後、お前と生活を続け、俺の心の傷が全て癒えた時に、この誓約書は破いて捨てる事にする。

妻は誓約書を手に取り、暫し固まった。内容を確認し、ようやく、自分のした事が少しずつ理解出来てきたのだろうか。

内容を確認できたら、判を押してくれ。今、判がないなら署名してくれ。

ちなみに、心配してるのかも知れないから教えるけど、誓約書には慰謝料を回収する法的強制力はないから安心して。

、わ、、、わかりました、、、、。

妻は署名をした。

この、妻の行為を、素直に受け止めるのならば、妻は、まだ、私と別れたくない、夫婦を続けたい為の反省文として、この誓約書に署名をしたと言う事。

いや、それは違う。署名の真意は妻の自らの保身の為だけ。妻の真意は、今は俺との別れを決め切れないが、今後のKとの関係の成り行き如何では、私と寄りを戻した方がよいかも知れない。だから、署名しておこう。そう違いない。

第一、何より、私と一緒に続けていきたいと望むのならば、いの一番で真摯に謝罪して、結婚生活継続を私に懇願する筈。今は考えられない、などと言う言葉を吐く事自体がありえない話。

私は会社へ明日は有休取得する旨、連絡をした。

これから、新幹線に乗り、二人で自宅へ向かう事にする。そして、義母に妻を送り届ける事にする。娘を返品しに。

A私

B妻

KK